夏の間にせっせと窯からはがしたレンガをいよいよ運び出した。夫に前日に告げる。明日手伝ってほしんや。へ?急やな。午前中で終わりそう?それは無理そう。ま 行ってみようか。
夫を道連れに運び出す。ずっと憧れていたけれどもう今生では薪窯での陶芸は難しいのかも?なんてたまに諦めてみたりしてたけど、古い耐火レンガをもらえることになって、燃料となる廃材ももらえるアテがある。今生やらなかったら後悔するパターンね。
最近よく思い出すのはまだ20代だったころのこと。毎年手伝っていた陶芸家の薪窯の窯焚きがあった。
賑やかな国道を少しだけ入るだけで急に静かになる。その奥の林の中に窯があってその周りには薪がびっしり並んでいた。その薪の棚でここと外とを区切って結界をはっているようでもあったなぁ。そこここに彼女のオブジェ作品が転がるように置いてあった 小さいものはこれステキ。なんていうと いいよ。持って行きななんて気前よくくれたりして。どれも魅力的で、林の中で周りの木々と調和していた。私が手伝いに行くのは決まって夜 一人の時もあったし、誰か一緒の時もあった。テーブルの上にカップ麺やおにぎり、誰かの差し入れの甘いの。豚汁とかもあったような。その陶芸家が一人じゃ寂しいかもだから音楽かけるといいよ。と車から出してきてくれたCDの中にバッハのチェロの無伴奏組曲があった。置いてあったCDラジカセでかけてみる。窯焚きの最中にかけるのにこれ以上ぴったりの曲はないと思った。薪のはぜる音、窯の中の炎。窯の周りの埃っぽさ。林の湿気ぽさ。私一人の心細さと窯を焚いていることの誇らしい気持ちと。
あの時の空気、匂い。また新しく体験したくなっている。折々に思い出す そんなことが動き出していて嬉しい。とにかく我が家までレンガが来たのだ。